AIエージェントの企業への導入は、早晩重大な問題に直面することが明らかになり始めています。LLMはインターネット上のあらゆる情報を学習していますが、企業固有の知識・経験・判断履歴を、永続的かつ検証可能な形で保持できないからです。それはコンテキスト・ウィンドウなどの小手先のテクニックでは解決できません。ポストAIバブルでの主要な開発課題は、Operational World Model(業務世界モデル)の構築へ移ります。
Mindware マルチクライアント開発プロジェクト
第1期開発計画(案)
LLM WikiとConcept Indexを開発起点として
組織内知識マイニングによる
自己組織化型Operational World Modelの構築
第1期:2026年10月1日〜2027年9月30日
主催:マインドウエア総研株式会社
社内文書、RDB、業務ログ、報告書等に散在する情報を取り込み、LLMによる要素抽出、人間による確認、ConceptMiner/Concept Indexによる概念形成、Episode Cardとプロセスモデルへの構造化を行います。人間とAIエージェントが共通に利用できる、企業管理型の業務世界モデルを構築します。
- 対象者
- 製造、流通、小売、通信、IT、金融、食品・飲料等の企業における、AI・DX推進、情報システム、研究開発、経営企画、新規事業、ナレッジマネジメントの責任者および実務担当者
- 参加費
- 1口250万円(税別)/1口につき指名参加者2名まで
- 支払条件
- 申込・契約時に50%、プロジェクト開始前に残額50%
- 参加方式
- 複数口での参加可。参加企業名・担当者名は原則非公開
- 実施条件
- 最低催行社数を設けず、1社から実施
- 初期拡張目標
- 20社。参加規模に応じて追加開発、外部専門家、評価環境を拡充
プロジェクト概要
本プロジェクトは、複数企業の事前参加によって、企業内に散在する文書、データ、ログ、会話記録、判断履歴から、業務に再利用できる知識・経験・プロセスを形成する共通ソフトウェア基盤を開発する、1年間のマルチクライアント型開発プログラムです。個社ごとの調査・コンサルティングを主目的とせず、複数企業で再利用可能な製品基盤を成立させます。
個社知識が永続しない
チャット履歴や要約を読み込ませても、出典、変更履歴、権限、結果評価を備えた企業資産にはなりません。
RAGだけでは業務の全体像を持てない
文書断片の検索だけでは、誰がどの状況で何を判断し、その結果どうなったか、業務がどの順序と分岐で進んだかをモデル化できません。
分析結果が現場成果物にならない
クラスタやプロセスマップを表示するだけでは、現場が継続利用できません。業務マニュアル、事例集、判断根拠、改善候補まで生成する必要があります。
開発目標:組織知識マイニングによる業務世界モデルの構築
ここでいうOperational World Modelは、一般世界を模倣する巨大モデルではありません。企業内の主体、対象、状態、出来事、判断、結果、関係、業務手順を、出典付きで継続的に更新する組織固有のモデルです。
World Model散在する業務情報から、組織が実際にどう動いているかをモデル化する
第1期の中心開発成果
以下の5つを分離した実験ではなく、一つのデータ流通・管理基盤として接続します。
Organizational Knowledge Mining Core
文書、自由記述、業務データ、ログから、主体・行為・対象・状態・判断・結果等の候補を抽出し、人間の確認を経て再利用可能な知識単位へ変換します。
Episode Memory Core
出来事、状況、採用した判断、結果、評価、出典をEpisode Cardとして蓄積し、類似経験を検索・再利用します。
Process Mining Core
構造化ログと、非構造情報から抽出・確認したイベント候補から、実際の業務フロー、例外、手戻り、分岐をモデル化します。
Operational World Model Layer
文書知識、概念ノード、エピソード、プロセス、出典・権限情報を関連付け、継続更新できる共通スキーマと参照APIを整備します。
Business Artifact Generator
分析結果をグラフのまま渡さず、業務マニュアル、プロセス記述、事例集、判断根拠、改善候補等のドラフトへ変換します。
完成後に可能になる基本動作
業務システム、RDB、ファイル、Zapier等から文書、データ、ログ、出来事を取り込む。
原文、レコードID、日時、作成者、システム名等の出典情報を保持する。
LLMを言語処理部品として利用し、主体、行為、対象、状態、判断、結果、理由等の候補を抽出・正規化する。
人間が候補を確認し、修正、評価、承認、アクセス範囲を設定する。
確認済み情報から知識ページ、Episode Card、イベントログ、プロセス記述を生成する。
ConceptMiner/Concept Indexで概念的なまとまりを形成し、プロセスマイニングで実際の流れと例外を抽出する。
業務担当者はマニュアル、事例集、プロセスモデルとして利用し、AIエージェントはMCP/APIを通じて参照する。
新しい判断と結果を戻し、企業固有の知識・経験・プロセスモデルを継続更新する。
第1期参照実装に含める最低構成
完全自律型エージェントや戦略判断の自動化を約束するものではなく、企業が自ら確認・評価できる業務世界モデルの実装基盤を完成させることを優先します。
想定利用例
品質・保全
取り込む情報: 異常報告、設備ログ、原因仮説、対処、復旧結果
生成・活用する成果: 類似事故カード、有効・無効な対処、標準手順との差異、保全マニュアル案
研究開発
取り込む情報: 実験条件、設計レビュー、失敗、判断、結果、次の仮説
生成・活用する成果: 失敗事例の想起、仮説の系譜、条件の概念クラスタ、実験記録の再構成
営業・顧客対応
取り込む情報: CRM記録、商談メモ、提案、反応、受注・失注理由
生成・活用する成果: 類似顧客・案件、勝敗要因、対応プロセス、提案・応対プレイブック案
製造・物流・間接業務
取り込む情報: 作業ログ、申請履歴、メール、引継ぎ、日報
生成・活用する成果: 実際の業務フロー、手戻り・滞留・重複、プロセス説明書、改善候補
経営・新規事業
取り込む情報: 会議記録、前提、選択肢、意思決定、実行結果、評価
生成・活用する成果: 意思決定履歴、過去方針との整合、類似判断の結果、判断根拠集
技能・知識継承
取り込む情報: ベテランへの聞き取り、散在文書、事例、暗黙の判断基準
生成・活用する成果: LLM Wiki、業務プロセス、事例集、例外対応の記録、教育用ドラフト
なぜ今、企業AIにOperational World Modelが必要なのか
01
LLMは膨大な一般知識と言語能力を持ちますが、企業固有の経験、判断基準、業務の実態を、永続的かつ検証可能な形で保持しているわけではありません。
02
RAGやベクトル検索は文書断片を探す手段として有用ですが、判断履歴や業務の順序・分岐までを統合的に表現するものではありません。
03
本プロジェクトではLLMを抽出・要約・言語化・対話の標準部品として利用し、競争力の中心を、企業内の観察情報を概念・経験・プロセスへ変換して維持する仕組みに置きます。
KDD/データマイニング時代の教訓を繰り返さない
発見アルゴリズムが有用でも、分析結果から利用可能な業務成果物までの距離が大きければ、現場では持て余されます。本プロジェクトは、発見を文書・プロセス・事例へ変換する工程までを製品に含めます。
すでに存在する実装基盤
本プロジェクトはゼロから始まる研究ではありません。2025年4月から約1年3か月にわたり、以下の技術を動作するシステムとして検証してきました。
ThinkNavi/LLM Wiki
実装済み文書を知識ページへ再構成し、質問パターンから適切なページへルーティングして元文書を参照。第1期ではSingle Wiki Builderと業務成果物生成の基盤にします。
ConceptMiner
実装済み埋め込み空間にGrowing Neural Gas(GNG)と最小全域木(MST)を適用し、概念ノードと関係構造を形成します。
Concept Index
開発中既存RDBのレコードを概念ノードへ対応付け、SQLから概念的な抽出を可能にし、業務データとエピソードをモデルへ接続します。
CCM/思考支援
実装済み概念間の関連を利用した連想応答と、知識・判断支援の実験環境。概念、エピソード、判断候補の関連利用を検証します。
基本思想:自己組織化概念アプローチ
固定オントロジーを先に作るのではなく、観察データから概念構造を育てる
ルール、オブジェクト、オントロジーは、システム連携、規制対応、権限管理に有用です。一方、現場で生じる新しい類似性、例外、曖昧な判断、組織固有の意味を、事前定義だけで網羅することは困難です。実データ内部の類似性と関係から概念構造を形成し、必要な部分だけを人間が命名・固定する相補的な設計を採用します。
参加企業に提供する成果物・サービス
参加企業数にかかわらず、各参加企業には契約で定める基礎パッケージを提供します。20社は催行条件ではなく、追加開発と外部レビューを本格化する拡張目標です。
Organizational Knowledge Mining Core
情報取込、出典管理、LLM抽出候補、人間確認、知識単位・イベント候補生成を含む参照実装。
Episode Memory Core
Episode Card、関連事例検索、API/Webhook入力、MCP/API参照、基本管理機能を含む参照実装。
Process Mining Core
イベントログ生成、基本的なプロセス発見、経路・反復・例外の可視化、評価シナリオ。
Operational World Model仕様
文書知識、概念、エピソード、プロセス、出典、権限を関連付ける共通スキーマ、API仕様、サンプルデータ。
Single Wiki Builder
ThinkNaviの単一Wiki構築機能を切り出した参加企業限定ソースコード、限定GitHub、セットアップ手順、サンプルデータ。
Concept Index
概念検索評価用の実行ファイルと基本ドキュメント。対応OS・DB・利用条件は提供時に明示。
ThinkNavi/ConceptMiner年間利用権
第1期期間中の対象機能の利用・評価権。API料金、処理規模、利用範囲は参加要項で定義。
年間オンラインプログラム
月例セッション、技術デモ、開発報告、録画・資料アーカイブ、共通質問受付、最終報告。
参加規模に応じた成果の拡張
第1期開発スケジュール(案)
2026年10月〜12月
中心作業: 参加企業ヒアリング、共通ユースケース定義、情報取込、出典・権限・Episode Card・イベント候補のデータモデル設計
主な確認成果: 登録・編集UI/API、抽出・確認フロー、初期デモ
2027年1月〜3月
中心作業: 関連事例検索、イベントログ生成、基本プロセス発見、ConceptMiner/Concept Index接続、MCPサーバー/API参照
主な確認成果: 知識・エピソード検索、プロセス可視化、AIエージェント参照デモ
2027年4月〜6月
中心作業: Single Wiki Builder接続、業務文書・プロセス記述・事例集生成、参加企業向け評価シナリオ
主な確認成果: 知識・概念・エピソード・プロセス統合デモ
2027年7月〜9月
中心作業: 評価結果反映、権限・変更履歴の改良、ドキュメント、サンプル、最終タグ版、成果報告
主な確認成果: 参照実装、技術資料、評価結果、最終シンポジウム
年間オンラインプログラム
参加条件とプロジェクトの位置付け
1口につき指名参加者2名まで
複数口での参加可
支払条件
申込・契約時に50%、プロジェクト開始前に残額50%。
最低催行社数なし
拡張目標未達を理由とする中止・返金は行わず、契約で定めた基礎成果の提供をもって履行します。
参加企業情報は原則非公開
会社名、ロゴ、担当者名を公開する場合は事前承諾を得ます。
知財・意思決定権
参加口数にかかわらず、知財持分、議決権、排他的権利、ロードマップ決定権は付与しません。
利用範囲
成果物は契約範囲で社内評価・研究利用を認め、第三者再配布や競合サービスへの利用を禁止します。
個社対応
個社固有のPoC、連携、データ整備、カスタマイズ、本番導入支援は別契約です。
研究上の基礎と主要参考候補
個々の理論を忠実に再現することや、第1期中にすべてを実装することを約束するものではありません。企業環境で検証可能な参照実装へ変換するための設計上の参考候補です。
LLM Wiki
Andrej Karpathy
原資料を断片のまま検索せず、LLMが再利用可能で相互参照できる知識ページへコンパイルする考え方。
Process Mining
Wil M. P. van der Aalst ほか
情報システムのイベントログから実際の業務プロセスを発見し、逸脱、ボトルネック、反復、例外を分析する研究系統。
Generative Agents
Joon Sung Park ほか
経験を自然言語の記憶として保存し、関連性・新しさ・重要性に基づいて取り出し、reflectionとplanningへ利用する構造。
Complementary Learning Systems
McClelland, McNaughton, O’Reilly
新しい出来事を高速に記録する系と、多数の経験から一般構造をゆっくり学ぶ系を連携させる設計仮説。
Case-Based Reasoning
Aamodt & Plaza
過去事例を検索・再利用・検証・修正し、新しい事例として保存する問題解決サイクル。
KDD/Knowledge Discovery
Fayyad, Piatetsky-Shapiro, Smyth ほか
データ選択から評価までを統合する枠組みを批判的に参照し、分析結果を現場向け文書・プロセス・事例へ変換する工程を製品に含めます。
プロジェクト統括責任者
1982年から出版・セミナー会社でニューメディア等の先端技術トピック・セミナーの企画・運営に携わる。1985年から大手コンサルティング会社で先端技術分野の事業機会調査に従事。1986年にはファジィ推論チップを含む「AIチップ・セミナー」を開催した。1997年、マネジメント誌で「概念調査」の連載記事を執筆。1998年にKohonenの自己組織化マップ(SOM)に焦点を定めて研究を開始。2000年よりViscovery SOMineの日本代理店としてSOMデータマイニングに従事し、HUGIN、XLSTAT等も取り扱った。2023年から独自開発へ移行し、Growing Neural Gasと最小全域木によるConceptMinerの技術を確立した。
