AIに必要なビジネス・コンテキストとは

AIは企業固有の事情を自動的には理解しない

大規模言語モデルは幅広い一般知識を持っています。しかし、個別企業の顧客、製品、設備、過去のトラブル、商談経験、社内ルール、現在の業務状態まで最初から知っているわけではありません。

AIを企業業務で利用するには、その仕事を判断するために必要な情報を与える必要があります。

こうした情報を、本サイトではビジネス・コンテキストと呼びます。

ビジネス・コンテキストは文書だけではない

AIに必要な情報というと、RAGによって関連文書を検索し、LLMへ与える方法が一般的です。

しかし実際の業務判断では、文書知識だけでは十分ではありません。

たとえば営業担当者が案件を判断するときには、

  • どのような顧客か
  • 過去のどの案件に似ているか
  • どのような案件で受注・失注してきたか
  • 現在どの段階にあるか
  • 顧客が何を重視しているか

といった情報も利用します。

製造であれば、

  • 現在の工程状態
  • 過去の正常状態との違い
  • 類似する不良発生前の状態
  • 材料や設備条件との組み合わせ

などが判断材料になります。

ビジネス・コンテキストには、文書に書かれた知識だけでなく、データから得られるパターンや状態も含まれます。

機械学習によってコンテキストを形成する

企業には過去の経験が大量のデータとして蓄積されています。

機械学習を利用すると、そこから業務上意味のあるパターンや類型を形成できます。

顧客データから顧客セグメントを形成する。
商談履歴から典型的な商談パターンを形成する。
製造データから典型的な工程状態を形成する。
問い合わせ履歴から故障・対応パターンを形成する。

新しい事象が発生したときには、それが過去のどのパターンに近いかを照合できます。

さらに現在では、自然言語テキストを埋め込みとして表現できるため、数値・カテゴリデータだけでなく、自由記述、報告書、メール、ニュース、問い合わせ、商談記録なども同じ分析の対象にできます。

過去の経験を現在の判断に使う

この仕組みを継続的に利用すると、

過去のデータ
→ パターン・状態・類型の形成
→ 新しい事象との照合
→ 類似する過去事例や関連知識の取得

という流れを作ることができます。

これは機能的には、一種の連想記憶と見ることもできます。

ただし重要なのは名称ではありません。

実務上得られる価値は、新しい問題に直面したとき、過去に蓄積された大量の経験の中から、現在の状況に関係するものを利用できることです。

ナレッジベースと組み合わせる

機械学習によって形成されたパターンだけで、すべての判断ができるわけではありません。

ある商談パターンが識別されたら、そのパターンに関連する過去案件、提案資料、製品情報を参照する必要があります。

ある故障パターンが識別されたら、過去の対応記録、マニュアル、部品情報が必要になります。

そのため、概念形成モデルとナレッジベースを組み合わせます。

企業データ・自然言語テキスト
→ 概念形成・パターン認識
→ 現在の状況を識別
→ 関連する知識・過去事例を取得
→ AIへ提供

これによって、AIに大量の情報を無差別に与えるのではなく、その時点の問題に関係するビジネス・コンテキストを提供できます。

AIエージェントと従来型データマイニングをつなぐ

AIエージェントは自然言語を理解し、情報を検索し、外部システムを操作できるようになっています。

一方、企業には長年蓄積してきたデータと、データマイニングや機械学習によって利用できる経験があります。

両者は競合するものではありません。

従来型の機械学習によって企業固有の業務パターンを形成し、その結果をAIエージェントの判断材料として利用する。

マインドウエア総研が現在取り組んでいるのは、この接続です。